前代表社員長崎真人自分史
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 まえがき(・4)
   ここまで読んで下さった方は、恐らく一つの疑念をお持ちになるのではないかと思います。先に述べましたように、台湾は日本の植民地でした。その支配のあり方も、戦時と言う事もあり、徹底した植民地支配というべきであったと思います。その台湾の人々が何故、かっての植民者・日本人に対して、これ程こだわりのない、暖かい情愛を持って接して下さるのだろうか?それが父や私などの一部の例ではなく、世界で台湾ほど親日的な地域はない、と言って良いほど、台湾と交流のある日本人全員が、そう感じるのは何故なのでしょうか?例えば、隣の韓国との関係は、このようではなく、きわめて難しい感情問題が解決できないままになっています。この差は一体何なんだろうか?不思議に思われる事でしょう。    台湾は、最も身近な隣国です。経済的にも、あるいは軍事的にも、アメリカとの関係もあって、切っても切れない縁があります。台湾海峡の問題は、直接日本の防衛問題に影響します。台湾に関心をお持ちの日本人各位に、私は、台湾で生まれ育った一日本人として、是非、台湾を深く理解して頂きたいと願わずにおれません。私の自分史の一ページが、その一助になれば幸甚です。

 この自分史は、上記のようなテーマも抱えながら、昭和初期の経済恐慌のさなかに生まれ、戦争の時代、戦後の変動期にもまれもまれながら、生き抜いてきた一人の人間の生き様の幾ページかを、世紀をまたぐ大きな世界史社会史の中で辿り、共感を持ってお読み頂けるような、そんな自分史に書き上げる事ができればと願いながら、筆を進めたいと思います。