前代表社員長崎真人自分史
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第一部】第十三話 憧れの台北高校へ(
 
 発表の日、私の知らぬ間に、浦川さんの姉さんが自転車で見に行って下さって、息を切らしながら帰ってきて「合格よ」と大きな声で知らせて下さった。
 私には、人事を尽くしたと言う満足感があって、それほど結果を気にはしていなかった。自分でも確かめにいってきたが間違いなかった。
 私が「ただ今」と言うと、私と同い年の次女の節ちゃんが、玄関に駈け出て来るや、三つ指付いて「おめでとうございます」と丁寧に頭を下げた。おかっぱ頭の黒髪がハラリと前にたれて色白のうなじが眩しかった。

 当時の学制では、中学校は5年で卒業だったが、成績次第で四年修了で上級学校の受験を許されていた。しかし、四年修了で上級学校に合格するのは、極少数。特に、旧制高校というのは、今で言えば東大合格に匹敵する難関で、花蓮港中学では、開校以来皆無の事だった。
 
短くも美しかりし最後の高校生活
 四月、私は、台北高校理科乙類(ドイツ語専攻で、医学、生理学、生物学等に進むコース)に入学のため、再び単身上北した。

 兄の高校時代に一度だけ寮祭を見に行った事があった。寮庭の真ん中に数本植えられたビンロウ樹にもたれて、全身真っ黒に塗った寮生がサキソホーンを吹いていた。腰蓑ひとつの一群がコンクリートの廊下を踏み鳴らし踊り狂っていた。その奇抜さ、エリートらしく昂然とした風情に、眼も心も奪われ例えようもなく憧れた。その七星寮がわが住み家となったのであった。

 寮歌演習でも、突如として起こるストームでも私はいつも先頭だった。まるで抑えに抑えられてきたエネルギーが一挙に爆発したかのようであった。