前代表社員長崎真人自分史
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第一部】第十三話 憧れの台北高校へ(
 
 この台湾沖海戦の戦果を、海軍は完全に偽って報告し、ためにその後の沖縄と台湾の防衛に齟齬を来たす事になったのみならず、本土決戦の最後の防衛線の一角に重大な欠落を生じる事になった。

 報告によれば、敵空母11隻撃沈はじめ、敵艦隊に壊滅的な打撃を与えたと言う。実際には、撃沈は1艦もなく、逆に我方は、沖縄・台湾方面の航空戦力の大半に当たる300余機を失い、これ以後は特攻作戦以外に戦う手段はなくなったと言うのが真実。

 海軍の面子にかけて、陸軍にも大本営にも敗戦の事実を知られたくなかったというのが虚偽報告の理由だったと後の戦記には書かれている。
戦火一挙に迫る台湾沖海戦の惨
 
象を食った話
 この年の秋、円山動物園の象が死んで解剖すると言う連絡があり、級友と2人、急遽見学に行った。
大きな雌の象だった。現地に着いたときには殆ど作業は終わっていて、人間が何人も入れそうな馬鹿でかい大腸がコンクリートの床に山になっていた。餌が悪いせいで腸閉塞を起こしたとの事だった。

 結核の恐れもあると言うので、誰も手をつけなかったが、何しろ肉などと言うものには滅多にお目にかかれる時節ではなかったので、煮て食えば大丈夫だろうと、2貫目ばかり荒縄で縛って貰ってきた。

 寮へ帰って早速、同室の面々とすき焼きにしたが、いやその硬い事とても歯が立たない。それに何とも臭い。悪戦苦闘したが結局なんとか食べてしまった。腸閉塞を起こすのではないかと皆で苦笑したが平気だった。象よりも我々の胃袋のほうが丈夫だったと言う事だ。