前代表社員長崎真人自分史
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第一部】第十六話 廃校・旧制台北高校の苦悩(
 
第16話 国籍を分かつ日台同窓の別離 廃校・旧制台北高校の苦悩

 国民党による諸官庁や企業の接収は次々に進み、「怨みを以って怨みに報ぜず、徳を以って怨みに報ず」と言う、蒋介石の巧みな初期占領政策によって、日本からの権力委譲は何事もなく平和裡に行われたようであった。
 実際には、彼らには何の実力もなかった。対中共戦に主力を投じていたし、余力を残していた23万余の日本軍の存在も計算に入れなければならなかった。
 
とんぼ
 10月下旬には台北高校も接収され、名も「中華民国台湾省台北高級中学校」と改められた。「高級中学校」と言う呼び名は、我々のプライドをいささか傷つけたけれども学校の中身は殆ど何も変わらなかった。
 校長室には新任の中国人が納まっているという話だったが、その姿を見る事はなかった。ただ「サンミンツウイ、ウータンソートン、イチェミンコウ、イチンタート」と言う中華民国の国歌を小学生から我々まで歌わせられた。