前代表社員長崎真人自分史
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第二部】第四話 生きる道を得た出会い()
 
 顧みれば、この世の中には、自分などよりもはるかに悲惨な境遇にある人々が少なくない。自分はむしろ仕合せなほうだったのかも知れない。
 自分は、人一倍一所懸命に勉強して、自分の努力で、中学、高校とエリートコースを歩んでこれたのだと自負していた。しかし、それはそうではなかった。
 温かい家庭に育って、父母の愛を絶対のものと信じ、学業以外の事は別段何も考えずに生きて来れた。だがしかし、この世の中には、一人一人の努力や善意や愛の力を超えた、はるかに強大な社会機構が存在している。
 
階級の存在・生まれながらの差別を知る
 例えば、どんなに勉強したくとも家庭が貧しければどうにもならない。どんなに優秀な才能も素質も、経済的に許されなければ埋もれるより外ない。いや、そんな才能がある事に気付く事さえなく、誰に認められる事もなく、生まれながらに与えられた境遇を、ただ黙々と耐えて生きていく以外にない多くの人々がいる。
 自分は、自分がこうなって初めて、走馬灯のように、自分が今までの人生で触れた多くの不遇な人達の事を思い出していた。