前代表社員長崎真人自分史
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第三部】第一話 中央科学技術部長は赤シャツの似合う好男子()
 
本部細胞の学習会で徳田球一の熱弁を聞く

 本部細胞の学習会があり、徳球の話があるというので、私も参加させてもらった。徳球の愛称で呼ばれていた書記長徳田球一は、18年にわたる獄中生活を戦い抜いてきた、日本共産党の当時の最高指導者だ。
 話の中身は記憶にないが、眼前に見る徳球は、巨魁と言うよりほか表現のしようがあるまいと思った。人並みはずれて大きな頭、大きな目、大きな鼻、大きな口、そして見事に禿げ上がった広い額。その広い額に、見る見るビッショリと汗をかいて、広げた手ぬぐいで、上から下までツルリと拭く。すぐまたビッショリの汗。正に全身に情熱を溢れさせての熱弁だった。それも唯の熱弁ではない。何とも言えぬユーモアを含み、聞く者を惹きつけ昂ぶらせずにはおかない。
 
 アジテーターと言うのであろう。これ程見事な弁舌家にはその後も会わない。
 50名ほどいただろうか、本部勤務の若手党員たちは、もうスッカリ魅せられて、ドッと爆笑したり、夢中で拍手したりしていた。

「君、青共に廻ってくれないか」と言う
 2週間ほどたって、石井部長が私に「すまんが青共に廻ってくれないか」と言う。党中央の方針が変わって、部員を増やす予算が取れなくなったのだと言う。
 青共にはすでに話をつけてあると言う。青共(日本青年共産同盟)の本部にも科学技術部があって、石井さんがその指導に当たっていた。その指導下で仕事も殆ど同じような事だからと言う。
 それにしても如何にも便宜的な話だと思ったが、今の私には従うほかない。