前代表社員長崎真人自分史
目次へ 前のページへ 次のページへ
第三部】第十話 血のメーデー そして神奈川へ(8)
 
日比谷公園から「人民広場」へ
 私は、民青本部員として中部地区の民青の隊伍の中にいた。中部地区のデモのコースは日比谷公園が終点になっていたのだが、自然の勢いでそのまま日比谷交差点を通過し、GHQ前から馬場先門に至った。
 先頭は全日自労の隊伍、次が全学連、民青は3番目に位置していた。馬場先門で先頭は足踏みした。 馬場先門は厳重に閉鎖され一個大隊の警官隊が警備していたのだ。「民青前へ」私は民青のデモを指揮し最前列に出た。
 馬場先門は横幅50メートルほどだったかと思う。その道幅一杯にデモ隊と警官隊とが睨み合い対峙する形となった。
 次の瞬間、何故か?警官隊が閉鎖していた柵を持ってサッと左右に開き、デモ隊に道を譲った。
 
 突然の事態の変化に戸惑ったが、後続部隊の圧力もあり広場内に入った部隊は、やがて歓呼の声を上げ、二重橋まで200メートルほどの距離を、隊伍を乱して走った。
現場からの証言 警官隊の襲撃は突如・無警告
 二重橋前に達したデモ隊は、そこで一挙に緊張から解放され、特別何もない事を確認すると、三々五々円陣を作り芝生に腰を下ろして、お弁当の包みを開き始めた。
 その先の行動は全く予定がなかった。「人民広場」に入る事だけが目的だった。それが達成された今、満たされた思いに皆の表情は平和そのものであった。
 「人民広場」の芝は手入れが行き届き、松の緑も五月の薫風に美しく輝いていた。