前代表社員長崎真人自分史
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第四部】第三話 税理士開業秘話()
 
第三話
 税理士の資格で最も原則的なのは、国家試験に合格する事だが、抜け道がある。
 ひとつは税務官公署に10〜23年(従事した職務により決められた年数)勤続した者、もうひとつは大学院で修士以上の課程を修了した者、に対する「試験免除規定」だ。前者は、退職公務員の天下り、後者は、税理士の子弟に多い後継者対策と言って良いかと思う。

 一般には、試験に合格するには、何年も苦労に苦労を重ねなければならないと言うのに、税務官公署の勤務実績だけで資格を与えられると言うのは、これは著しい不公平であるばかりでなく、税理士制度の根幹に係る問題をはらんでいると、私は思う。
 
 税務署退職者の税理士開業は、組織的に顧問先を準備し提供する、一種の天下り(利益供与・人事政策)であるばかりでなく、当局による税理士会操縦手段として有効だ。OBが税理士界の過半数を占める事になれば、税理士の役割、立場は、「お役所」寄りに変質しかねない。その恐れは現実のものになりつつあると、私は思う。

 一般の国家試験受験者の場合、平成17年度の実績で見ると、受験者総数56314名で合格者1055名、合格率は1.8%強。うち41歳以上の受験者9772名で合格者158名、合格率1.6%となっている。
 単純に比較は出来ないが、司法試験第二次の同年度の受験者39428名、合格者1464名、合格率3.7%を参考にしても、税理士試験は、かなりの難関と言って良いだろう。