前代表社員長崎真人自分史
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第一部】第九話 上級生が敬礼して通る、まるごと古着の新入生(
 
第9話 上級生が敬礼して通る、まるごと古着の新入生


「この野郎!自由主義者・個人主義者め」

 
 1940年(昭和15年)私は台北第一中学校に進学しました。一中は、台北でトップの名門校です。その一中に、旭小学校の私のクラスから15名が合格すると言う、飛び抜けた好成績でした。担任の中村先生の特訓のお陰と言うべきでしょう。
 詳しい事情は判らないのですけれども、その功績者・恩のある中村先生は、旭小学校卒業直前に、私たちの前から突然姿を消しました。伝え聞いたところによれば、その前年あたりから、台湾総督府の監督官から、時間外の補習など過度な受験勉強を抑制する通達が出されていたらしく、中村先生はそれに違反して処分されたのではないか、朝鮮に飛ばされたらしい等の噂でした。
 この件については、学校からも親たちからも何の説明もなく、できれば触れたくないような素振りだった事を、後年、私なりに推測すれば、それは、全く根拠のない推測に過ぎないのかも知れませんが、あるいは治安維持法に触れるような隠された事実があったのかもと思ったりしています。