前代表社員長崎真人自分史
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第二部】第六話 「君は共産党員ではないか」にビックリ()
 
第6話 「君は共産党員ではないか」にビックリ

 翌1947年4月、同じ農機具部の研究室に東京理科大卒の新人が入ってきました。青白く切れそうな面立ちと鋭い目をした青年でした。寮生活も一緒でしたが、彼はあまり他の同僚と付き合いもせず、独り何か隠れて読んでいるようでした。
 私はこの青年に特別な関心を持ちました。ある日、実験室に独り居た彼に、私は「君は共産党員ではないか」と突然聞いた。彼は驚いた。「どうしてそう思うのか」と反問しました。私はそれには答えず、ズバリと「実は僕もできれば入党したいと思っていたのだ」と言いました。
 

 この出会いは全く不思議だと私も思います。党員である事を隠していた彼をどうして私が見抜いたのか? 彼の兄は戦時中、思想犯として刑務所にいたそうで、戦後間もないこの時期、彼が慎重に身分を秘匿していたのは当然のこと。それが前後の脈絡もなく突然こんな話になったのだから、彼が驚くのは当たり前。どうしてなのか私にも解らない。これは真実を求める者の直感と言う以外にない事でした。
 後に知った事ですが、この4月試験場に入った新卒の中に、もう一人農専出の党員がいて、彼らふたり定期的に東京の組織と連絡を取り指導を受けていたようでした。