前代表社員長崎真人自分史
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第三部】第八話 浦島太郎の心境()
 
第8話
 ひと月足らずの間の事だったが、築地警察署から釈放されて深川に戻ってみて感じたのは何やら浦島太郎の気分だった。
 逮捕される前の高揚したレッドパージ反対の戦いがスッカリ鎮静化したかのような空気になっていた。
 


 主要な労組のすべてで、権力と一体化した民同(民主化同盟=反共勢力)が台頭し、それまで労働運動の主流を形成していた、革新派の幹部・活動家のほとんどが、労組の役職も職場をも追われ、取り付く島もない状況になっていた。
 民青のオルグとして、それまで正門から出入りできていた、大会社のいずれもが守衛所で門前払いだった。
 この時期の党の方針には「職場放棄闘争」等と言うような、極左的偏向に冒された歪みがあって、パージに対抗して職場に根を張って戦うのでなく、逆に、活動家を職場から遊離させ街頭に走らせて、必要以上に損害を大きくした。