前代表社員長崎真人自分史
目次へ 前のページへ 次のページへ
第三部】第七話 築地警察署勾留23日()
 
 次の同志は、二三人の特高に手取り足取り担がれて、私の居る第三房へまるでたたきつけるようにして投げ込まれた。一坪半ばかりの監房は十二・三人の同房者で満員だった。その真ん中に叩き込まれて倒れたまま、激しい息遣いと呻きで身もだえするこの同志は、もはや起き上がることすらできなかった。
〜中略〜
ふたたび彼の顔をのぞいたとき、容態は急変していた。半眼を開いた眼はうわずって、そして、シャックリが・・・。私は大声で怒鳴った。看守は慌てて飛び出していった。
〜中略〜
 
 同志を乗せた担架がまさに留置場を出ようとするときだった。奥の第一房から悲痛な、引き裂くような涙交じりの声が叫んだ。
 「コーバーヤーシー・・・・・」
「小林多喜二」下 手塚英孝著 新日本新書
124頁〜127頁の抜粋

このくだりを読んだとき、私の全身に電流が走った。小林多喜二が、私が居たあの第三房に投げ込まれ、あの板敷きで命を絶たれたのだ。