前代表社員長崎真人自分史
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第四部】第一話 湘南商工会事務局員として「民商攻撃」に直面()
 
「自主計算の手引き」で班毎に学習会

 私は、自主計算を進めるため、手引きになるテキストを作成し、支部をいくつかの班に分け、班毎の学習会を開く事にした。
 テキストの第一ページには、表題は正確には覚えてないが、いわば「税金とは何ぞや」「税金の本質」と言うような事を書いた。
 当時の私の国家観は、レーニンの「国家と革命」そのままだったので、国家とは、階級による階級の抑圧装置であり、税金は、国家権力による収奪に他ならなかった。税務署は年貢取立ての悪代官、会は佐倉宗吾とむしろ旗に模せられる民衆の正義の味方だ。表現はそれほどストレートではなかったかと思うが、そんな気持ちで「税金の本質」を説明した。
 
 会員には結構評判が良かったのだが、本部事務局の審議で「税金は反対給付なしに国民から徴収する金銭給付」と言うような無味乾燥な公式的定義に書き換えられたのは残念だった。
 間もなく始まる「反税団体」と決め付けた攻撃を予測すれば、「税金の本質」に関する論議は、もっと深められねばならなかった基本的なテーマであった。

 2ページ以下に、損益計算と資産負債の増減計算による、簡易な所得算定方法を書いた。零細で記帳能力のない業者の場合、売上あるいは仕入だけしか把握できないケースも少なくなく、当時の税務当局が使用していた「所得標準率」を利用したり、生活費から推計する方法等で、自主的な判断の根拠を提供した。