前代表社員長崎真人自分史
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第二部】第八話 研究室を出て未知の世界へ()
 
 ああその嫌悪すべき旧世紀の泥沼の中から、今こそ、何ものをも恐れず、ひたすらに突き進む、勃々たる新しい世代の息吹き。
 それらの入り混じった雑然たる交響楽は、君の窓を激しく打ち鳴らしているではないか。耳を傾けてみたまえ。その響きが君に聞こえない筈はないのだ。その響きは、ラボラトリーの全体を、今や大きく揺り動かしている。しかもなお、その響き、その動きをよそに、君は一体何を夢見、何のために真理を究めんとしているのだろうか。

 友よ!観念の世界に泳ぐを止めよ!
 
 君も私も今こそ、ゴチックの殿堂を出でて、吹きすさぶ嵐の中に立ち、自由と平和を守る戦いの先頭に立つべきではないだろうか。その血みどろの戦いの中に、君はハッキリと見ることができよう。自由とは何か。幸福とは何か。そして、真理が何処に存在するかを。
 その日こそ、君と私とは胸をふくらませ、ガッチリと腕を組んで進むのだ。
その日は決して遠いことではあるまい。

 友よ、その事を深く信じて待っている。昔の友を今もなお信ずるがゆえに。
“美しき魂”第3号