前代表社員長崎真人自分史
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第三部】第十三話 日本代表としてモスクワへ
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歓迎攻めで睡眠不足 特別列車で行くシベリアの大地
 日本代表団専用の特別列車でシベリア鉄道をモスクワに向かう。
 シベリアの大地は、正に春たけなわ、一面名も知らぬ草花に覆われていた。それが行けども行けども尽きない。多少の起伏はあっても地平線まで遮るもののない大平原。夕陽がことのほか美しかった。

 1日に2箇所か3箇所か、大きな駅に停車する。そのいずれでも、楽隊つきの大歓迎だ。戦後初めての平和使節とあって、歓迎の気持ちは痛いほど伝わったし、こちらもあらん限りの熱情込めて、段々慣れてきたロシア式の抱擁と両頬へのキッスにも尻込みせず、友好親愛の情を身体で表現した。
 


 それでも一寸困ったのは、若い娘さんたちがホームでダンスに誘ってくれたこと。日本青年のほとんどがダメ。止む無く勇敢な民青員としては飛び出さざるを得ない。一斉に拍手が起きる。お相手は、肉付きの良い極めつきの美人だった。私は農事試験場当時のサークル活動で、少しばかり経験があったのだが、全然通用しない。テンポの速いワルツに振り回され、冷や汗かきながら、日ソ友好の使命を何とか果たした。

 それが、夜となく昼となく連日連夜、モスクワまでの10日間、駅に着く度に繰返されると、段々疲れてきた。