前代表社員長崎真人自分史
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第三部】第十三話 日本代表としてモスクワへ
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「ダイチェ・ムニェ・セミナ」科学アカデミー植物園を訪ねて

 1週間滞在したホテルは、オスタンキノと言って市の中心部から少し離れた新開地にあり、ピカピカの新しいホテルだった。ベランダから見える向かい側は、国立科学アカデミーの植物園で、広い園地に幾種類もの草木が植えられていて、緑の中で働く人の姿も見渡せた。

 私が日本を出る折に横浜南区の居住班から託されたものがあった。それは、その班の仲間たちが花畑を共同で管理していて、そこで採れた草花の種子を、ソ連のコムソモールへのお土産にし、できればソ連の草花の種子をお返しに貰ってきて欲しいと言う事だった。
 
 ホテルの真向かいに植物園があったのは、誠に好都合だった。私はある日、約束を果たすべく植物園を訪ねた。

 日本代表の面々も中々やるもんで、同室の1人は、印刷工の集会で会った可愛いジェーボシカ(ロシア語・娘さん)とデートの約束を取り付けて出かけたし、後の2人は、ホテルのベランダから手を振って、植物園で働いて居た女性と親しくなり、私より先に植物園を訪問していた。私は、その女性に案内してもらう事にした。

 彼女は、医学生で夏休みのアルバイトで植物園に通っていたとの事だった。案内してくれた研究室で会ったのは年配の女性の研究者だった。母親のような暖かい感じの女性だった。