前代表社員長崎真人自分史
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第三部】第十三話 日本代表としてモスクワへ
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「社会主義の故郷」・モスクワ見聞録
 スターリンの暴政が暴露されソ連崩壊を見るのは、ずっと後のこと。当時の進歩的青年にとっては、社会主義は理想、ソ連はその理想を地上に実現した憧れの国だった。だから眼にするものすべてが、文句なしに素晴らしかった。
 モスクワは、市内どこへ行っても綺麗に整備されていたし、会う人すべてが人懐っこく温かみを感じさせてくれた。資本主義のガサガサした搾取社会から来た若者の眼には、理想郷と映じた。

 全ソ労働組合中央評議会の幹部による、ソビエート労働者の賃金、休暇等の労働条件に関するレクチャーは、夢のようだった。夢中でノートした。
 希望して、プラウダ(ソ連共産党の機関紙)印刷工場の見学に行った。大きな工場だった。予想外だったのは労働者たちの働く姿。
 

ノルマに追われるような感じが全然なく、悠々と腰を下ろしておしゃべりしたりしているのだ。
 ノルマと言うのは、労働組合の代表と経営陣の交渉で決められ、当然のことのように、普通の労働者がゆとりを持って達成できる水準だと言う説明だった。
 日本の工場の現場のような緊張感を感じられなかったのは不思議だった。
プラウダ印刷工場前で