前代表社員長崎真人自分史
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第三部】第七話 築地警察署勾留23日()
 
ポン引きと詐欺師が同房
 私が入れられたのは、留置所の入り口を入ってすぐの第三房。3畳ほどの板敷きに先客が3人いた。 ポン引き(進駐軍相手のパンパンガールの客引き)が2人、もう1人は詐欺の疑いと言う事だった。
 私は現行犯逮捕だし、黙秘だったので、警察と検事の取調べが一度づつあっただけ。接見も差入れも禁止されたので、全く何もなく2週間、決まった時間に起床し、食事し、午後15分ほどの体操の時間に一服し、夜早い消灯・就寝時間を迎えるまで、こんなにたっぷりと時間があって何もしないで何日も過ごしたのは、私の一生でこの時だけだった。
 

 お蔭で、同房のお仲間に全くの新知識の数々を聞かされ、格段に見聞を広める事ができた。
 夜中に、若いパン助が捕えられてきて「ファッキンクレージー」などとわめき散らして看守を手こずらせたり、これも深夜に色白肉感的な女性と優形の男性のカップルが入ってきて、「あれは何だ」と聞くと同房の先輩が「あれは白黒だ」と教えてくれた。
 何しろ此処は銀座の真っ只中、進駐軍相手の商売の裏も表も渦巻くところで、興味は尽きなかった。