前代表社員長崎真人自分史
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第三部】第十五話 悪戦苦闘!職業転々の数年 わが人生最高の体験記
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 採用されて驚いた。新聞印刷と言うのは当然時間との勝負だ。老練というほか無い文選工が、左手に小さな箱と原稿を持ち、右手で棚に並んだ活字を拾う。その音がまるで軽機関銃の発射音の如く、軽快な連続音が工場に響き渡る。
 何年か前に「若き戦士」の編集で印刷に立ち会ったことはあったが、ほとんど大組の段階だけだったから、町工場で見るこの風景は、熟練と言うものの凄さを存分に見せ付けてくれた。

 私は、入りたての小僧がやる解版だ。これだって簡単な仕事ではない。活字と言っても一通りや二通りではない。
 
 カナ・ひら仮名は、あいうえお順、漢字は漢和辞典の偏・旁の並びで棚に納めてあるのだが、それが大きさも色々、楷書とか行書とかの書体も色々。新聞活字はまた特別平たい形。これを義務教育を終えただけの少年が、どうやって覚えるのか?不思議だ。

 文選工は、活字の棚を全然見ない、原稿だけを見ながら活字を拾うのである。解版の小僧が間違って活字を棚に戻すと、忽ち「この野郎なんだこれは」と間違った活字が飛んでくる。
 私は、年格好だけは一人前だったので怒鳴られる事はなかったが、とても付いて行ける職場ではなかった。貴重な腕を持った職人たちは、その後どうなっただろうか?IT化された現在の印刷システムでは、昔語りだ。