前代表社員長崎真人自分史
目次へ 前のページへ 次のページへ
第三部】第十五話 悪戦苦闘!職業転々の数年 わが人生最高の体験記
1011121314151617)
 
“日本人は嘘つき”

 ある日の事、前記の中国人少年が定刻を1時間余遅刻して出勤してきた。少年の家庭は貧しかったらしく、朝のうちに別な仕事をこなしてから出勤して来るようだったので、私は眼をつぶっていたのだが、余りルーズになるのもどうかと思い一言注意した。 これに少年が真っ赤になって反発した。
 「日本人は嘘つきだ。遅れても良いと言ったじゃないか」「お前たちに中国人を注意する資格があるか」と言うのだ。その剣幕に私は言葉を失った。
 翌日、冷静を取り戻した少年が言う事には、実は前夜「三光作戦」の本を徹夜で読んで朝寝坊してしまった。「済みませんでした」と素直に謝る。
 
 「三光作戦」と言うのは、日本軍が華北で展開した「奪い尽くす、殺し尽くす、焼き尽くす」残忍極まる作戦。純真な中国人少年が、これを知って胸が潰れるほどの反応を示したのは当然過ぎるほど当然の事だった。
 「私こそ申し訳なかった。君の気持ちも知らないで余計な事を言った」「だが、知って欲しい」日本人の中にも、侵略戦争に反対して命を捨てて戦った人間もいたと言う事。私も日本共産党の一員として、日中友好に僅かでも役に立てればと思ってここに来て勤めているのだと。
 ふたりは涙ながらに手を握り合った。
 日本帝国主義の侵略が、中国の人々にどれ程大きな傷を残しているか、それは理解しているつもりでも被害を受けた立場でなければ理解しきれない重さ深さではないかと、思い知らされた一幕だった。