前代表社員長崎真人自分史
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第三部】第十五話 悪戦苦闘!職業転々の数年 わが人生最高の体験記
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中華街の中国書店に番頭として

 党の横浜市委員長が、また仕事を紹介してくれた。
 横浜中華街のひとつ裏通りに「中国書店」と言う中国語専門の店があった。
 店主は、華僑総会本部の会長をしていて忙しく、店に顔を出す暇はない。信頼の置ける人物に経営を任せたいと、党本部に話があったとの事。それまで一部始終を、神田にあった中国図書専門の輸入会社D社が面倒を見ていたのだが、私はその社員の身分で、この店に派遣される事になった。
 横浜中華街は、広東系の人が多く、この店も広東系らしく、男たちの溜り「茶館」の趣を兼ねていて、朝から4・5人の男たちが屯して茶を飲みおしゃべりに一日を過ごす場所になっていた。
 
 棚に並んでいた図書は、すべて中国語。「紅楼夢」「三国志」「聊斎志異」等の小説本、それに中華料理に関する、材料の選択から料理法に至る詳細な専門書。加えて中華人民共和国政府関係の広報雑誌等。
 客はほとんどなかったが、中華料理のコックさんが時たま来て熱心に専門書を読む姿は、ここへ来て初めて知った中華街の舞台裏だった。
 当時出始めたばかりだった「簡体文字」の解説は、比較的関心がもたれ、ある程度売れた。

 私は、文房具を仕入れて子供たちを店に呼び込む工夫をしたり、日本人向けに中国を紹介する雑誌や文献も入れて、市内の大学や労組等にも売り込んだが、成果は見るべきものがなかった。だから毎月の私と、もう一人いた中国人少年のお給料は、店主の持ち出しだった。